先日、当コラムで触れたコミュニケーションビジネスについてですが、今回は、この概念をもう少し掘り下げてみたいと思います。

先日、食通の友人とすし屋に入りました。

その友人は、食通なだけでなく、自分でも包丁を握り、魚を捌いてしまうほど、玄人はだしな料理人でもあります。

その友人がすし屋の大将が貝か何かを捌いているのをみて、「すげー」と感嘆の声。

赤貝を捌いていたようなのですが、その大将の手際がしばらしいのに驚いている。
自分だったら、何分もかかるところを30秒とかかってないのがすごい、ということらしい。

また、多くのすし屋は、すでに捌いたものを買ってきているため、こうして自分でお客さんにだしているのは、ちゃんとしている。

卵焼きだって、あれ、自分のところで焼いてるよ。最近は、ほとんど買ってきているものだしてるところが多いんだけどね、とのこと。

そうやって薀蓄をきいてから食べると、どことなく満足感が違います。

丼の上にのっているものは、少しも変わらないのにもかかわらず、です。

これこそ、コミュニケーションビジネスですよね。

つまり、情報を付加することによる付加価値の増大です。

この文脈で、コミュニケーションビジネスをとらえてみると、いろいろなことが見えてきます。

①コミュニケーションビジネスは消費者の生活に潤いを与える。
われわれは高度に効率化された消費生活を送っています。スーパーで買い物をしたりすると、ほとんど会話をしないで商品を購入していることに気づきます。特に、スーパーのプライベートブランドなど、商品としてのメッセージ性が少ない商品の購入ばかりになると、リアルな肉声の会話だけでなく、商品との”会話”すら希薄となります。これは、確かに効率的です。そして安いです。

しかしその一方で、生活にたいするこだわりや楽しみといったものが失われ、生活が潤いのないものになってきてしまいます。

この潤いを取り戻すのが、コミュニケーションビジネスの観点です。

対面販売で、生きのいい魚を「今が旬だよ、脂がのってるよ!」などと声をかけてもらって買う、そうした情報の付加が、食卓に会話を生み、生活に潤いをあたえていくのです。

②コミュニケーションビジネスは、サービス提供側に元気をあたえる
コミュニケーションビジネスを提供する側としてはどうか。
コミュニケーションビジネスとは、突き詰めると”人”を売っていると考えることができます。もっと、突っ込んだ見方をすると、商品やサービスの購入を通じて、人の姿勢、あり方を肯定しているともいえるのです。

あり方を肯定してもらえば、提供者としてうれしくないわけがありません。元気にならないわけがありません。
③コミュニケーションビジネスは、地球環境にやさしい
世界の食料の1/3は、人に食べられなく捨てられるのだそうです。一生懸命販売を促進して、消費を増やした結果、こんなことになっているなんて、なんとも切ない話です。

そして、当然のようにそんな生活は、地球環境にやさしいわけがありません。もう安く物量を増やしてということが、豊かさに、つながらない時代になっています。

一方、コミュニケーションビジネスの世界では、量と効率性の対岸の世界にあります。質と潤いの世界です。よって、必然的に地球環境にやさしくなります。

さて、先のすし屋の話に戻りますが、問題は、こだわり・心意気といった情報がうまく顧客に伝えられてないという点です。
たまたま、私は食通の友人がいたので、こだわり・心意気がわかりましたが、そうでなければ、コミュニケーションビジネスのメリットが伝わらず、この店は2度と行かなかったかもしれません。

わかる人にはわかるが、わからない人にはわからない、それでよいという割り切りはあるかもしれませんが、提供者側の少しの努力で、本来、受け取ることのできたコミュニケーションビジネスのメリットを相互で受け取ることができたのであれば、随分もったいないことだと思います。

このこだわりや心意気といったことを発見し、伝える努力のお手伝いをするのも、マケッターの役割なのではないかと思います。

このすし屋のように、少々シャイで、コミュニケーションビジネスのメリットを享受できていないような、そんな会社をすこしでも支援していければ、そう思った次第です。