先日、ランドセルを購入しました。

その接客は実に巧みですばらしいものでした。

実は、その場ではあまり買う気はなく、ちょっと見に行こうかくらいの軽い気持ちでいったのですが、気づいたら買っていました。

結果として割と高いモデルを買うことになったのですが、買わされてしまったような悪い感じはなく、気持ちよく買うことができました。

なかなかの接客であったので、そのプロセスを紹介したいと思います。

ランドセルとう商品の特質

その前に、ランドセルとう商品の特質をおさえておきましょう。

ランドセルという商品は、独特の特徴をもった商品です。

以下のような特徴があります。

①基本的な性能の違いは少ない
 形や大きさはほぼ決まっている。
 また、素材も高いものであっても安いものであってもほぼクラリーノ。
 シェアの7割はクラリーノなのだそうです。
 

②消費者の商品知識が少ない
 一生で何回も買うものではないし、昨今では一人っ子が多いため、前回買ったのが自分の子供の時だったりする。
 なので、基本的にはあまり商品知識がない状態で買うことになる。

③高いものを買ってもよいという消費者心理が存在する。
 自分の子供が小学生になる喜びで気分が高揚している。
 ランドセルというのは、人生の節目に買う大切なものという意識がある。
 6年間確実に使うものだから、無駄になるものではない。
 親から入学祝いとかでお金をもらっていたりする。

  等々の理由で、せっかくだからよいものを買ってあげようという消費者心理が存在します。

 このような特殊性があるため、あの手、この手で差別化を行い、高付加価値化(=高価格化)を狙いやすい状況にあります。
 

争点はどこか

選挙では、どちらの論が正しいかより、どこの土俵で戦うか、つまり争点のほうが大事だったりします。

マーケティングも同じです。

製品品質(スペック)ではなく、商品の切り口(=争点)で争うのがマーケティングの常套手段です。

例えば、こんな用途で利用できますよとか、そういった切り口を提案したりします。

ところが、ランドセルの場合、用途は決まりきったものだし、新しい切り口を作り出すことが難しいのが現実ではないかと思います。

あったとしても決定打になりにくい。

最近、A4のクリアファイルが入ります、という切り口でイオンが攻勢をかけたことがありました。

http://diamond.jp/articles/-/9390

しかし、今では攻勢をかけられた側のセイバンもA4クリアファイルには対応しているようです。

http://www.seiban.co.jp/support/faq.html

いずれにしても、なかなか決定打となる切り口が見つかりにくい商品、即ち成熟した商品といえそうです。

理解の促進

スペックでも切り口でも差別化が難しいとなると、あとは営業力がものをいってきます。

私が売り場に行ったときの気持ちは、まずは、どんな商品があるのか見に行ってみようというものでした。

売り場に行ってみると、7900円から5万円を超えるものまでいろいろあり、どう選んでよいのかわかりませんでした。

そこで近くにいた店員に、案内してくれるように頼みました。

いろいろ説明してくれるわけですが、ポイントは理解を促進してくれること。

例えば、せみね(※)。成長に合わせて荷重ポイントが変わってくるので軽く感じることができるのだそうです。

(※)体に沿った凹凸と弾力性のあるクッションで、肩甲骨から背中をサポートする「せみね」。姿勢をキープする役目を果たします。 成長に合わせてサポート部位が変わるのが特長。体の小さい低学年のころは上段と中段と下段で、体格が良くなる中学年・高学年のころは上段と中段で荷重を支える仕組みになっています。

(参考)http://www.seiban.co.jp/goods/function.html

他にも、3D肩ベルト。肩ベルトの形状が湾曲しているため体にフィットする機能。

(※)肩ベルトの内径を長く、外径を短くしたわん曲形状。内径は荷重を引き上げ、外径は荷重を引き下げるので、荷重のバランスを保ちます。 また、ベルト部分の接触面積を広くすることにより、お子さまの肩にかかる負担を軽減し、背負いやすくフィットする”わん曲形状”に改良しました。

等々。

一つ一つの機能は、正直なところ決定打となるほど、圧倒的な差別化要因ではない。

しかし、確かに機能としては、あるだろうなという理解はできる。

こういったものが3つ、4つとたたみかけるようにでてきて、さらに、それによって値段が違ってくるということが理解されてくると、だんだん気持ちが高まってきます。

人は理解が促進されていき、もう判断に必要な情報がないところまで情報を集めた段階で、モノを買います。

もちろん、理解をさせてくれたところから、ですね。

理解が急速に進むということは、結構うれしいことです。
そのうれしさを提供してくれたことで、営業担当に好意を持ちます。

その結果、そこから購入するということになるのです。

というわけで、以下が結論。

『商品で差別化できないなら、顧客の理解を促進せよ!』

昨今、ショールミングの問題がいわれていますが、店舗での対面販売の強みは、この理解の促進という部分ではないでしょうか。

対面販売の双方向性は、なんといっても理解が急速に促進することに優位性があります。

分かりにくい商品の場合は、この部分に力をいれると良いと思います。

おまけ

このランドセルを買ったのが、ショッピングセンターであり、ほかにも買い物があったので、商品を預かってもらいました。

その後、別の買い物を終えて取りに行ったのですが、我々が買った商品と同じ商品を梱包していました。

つまり、もう一つ同じ商品が売れていたのです。

おそらく同じ営業トークで。

その商品は売れ筋では高めの商品でしたが、違いを的確に説明し理解を促進した結果、購買につながったのでしょう。

やるな、とおもいました。