今回は、フランスの人気ファッションブランド「A.P.C(アーペーセー)」の面白い取り組みを取り上げてみます。

これどういうもの?

まず、1月17日MJの記事を見ていきましょう。

・同社の定番ジーンズをはき込んだ状態で店頭に持っていくと、引き換えに新しい定番ジーンズを定価の半額で購入できるサービスだ。

・回収されたジーンズは、クリーニングが施され、原則、引き取られた店頭に並ぶ。

・同サービスを利用するのは、30代以上の顧客を中心に、男性8割、女性2割程度。

・サービス開始の2010年から比べるとユーズドの購入客に、女性も増えてきているという。

・国内の直営店12店舗で展開、青山店では、月に5~10件程度の利用者がいるという。

・こうした使い古された感のあるジーンズを提供することで、商品そのものの再生はもちろん、定番ジーンズが経年変化した使用感の
具体例をみせることができるのも同サービスの利点。

・「自分で補修して使ってくださるお客様も多く、引き取り時に、思い出話を聞くのも楽しいし、商品を大事にしているのが伝わってくる」(青山店スタッフ)

・通常の接客時よりも、一歩踏み込んだコミュニケーションがとれることも強みだ。

・半額で購入できること、次のジーンズも同ブランドのものを購入という自然な循環がうまれる。

・さらに、顧客にとっては、自分な長年はいてきたジーンズが、愛用ブランドの店頭に並ぶこと自体が誇らしく感じるようだ。

(参考)http://www.apcjp.com/jpn/shop/apc/item/list/category_id/409

なかなか、面白いサービスですよね。

それでは、マーケティング的な仕掛けを分析していきましょう。

マーケティング的な仕掛けは?

①愛着の強化

一般に、消費者の購買行動のプロセスを分解してみると以下のようになります。

 ①認知⇒②関心⇒③理解⇒④購買⇒⑤利用⇒⑥愛着

つまり、

・広告等でまず、商品の存在を認知します。(①)
・そして、自分に関係があると判断するとその商品に関心を持ちます。(②)
・関心がある商品については、その商品関連の情報を収集し理解に努めます。(③)
・その結果、理解が深まり、商品を購入するに十分な価値があると判断すると購買行動をとります。(④)
・そしてその商品を利用します。(⑤)
・繰り返し利用するなどして、その商品から高い満足感をうると愛着がわき、リピーターとなります。(⑥)

このような以下のようなプロセスを経て、見込み客からリピーターへと、成長していくわけです。

さて、このA.P.Cのこの取り組みですが、秀逸なのは⑥の愛着を直接強化しているところです。

通常、⑥の愛着のプロセスを強化するには、

・利用を促進し商品への接触機会を増やす
・顧客との密なコミュニケーションを図る
・品質をあげる

などの方法が考えられますが、直接的かどうかというと、どうもそうでもないようです。

ところが、A.P.Cのこの取り組みをみていくと、より直接的にブランドに対して、愛着を持つようなサービスになっていることがわかります。

まず、消費者がこのようなサービスを行っているという情報を聞いた瞬間、ただのジーンズがA.P.Cのジーンズとなります。

「そういえば、このジーンズ気に入っていたけど、A.P.Cのジーンズだったよなぁ
 少し傷んでしまったけど、よくお世話になったなぁ」、と。

つまり、ここで商品にまつわる思い出とブランドを結び付けるわけです。
思い出というのは愛着そのものですので、ブランドへの愛着が強化されることになります。

さらに、お店に行って下取りしてもらうときに、店員の人と一歩踏み込んどコミュニケーションをとることで、さらにブランドへの愛着が強化されます。

加えて、その愛着あるジーンズが売りに出されるというのは、最高の栄誉でしょう。
また、それが売れたということになると、自分の’作品’が評価されたようで、とてもうれしいと想像されます。

もうこの時点で、熱狂的なファンになったといっても過言ではないといっていいのではないでしょうか。

こうしてみていくと、このサービスは、

 ①ブランドを想起するきっかけを与えている
 ②ブランドと思い出とを結合する仕組みがある
 ③思い出を店員に話すことで、ブランド愛の表現を発露する場所を提供している
 ④自分の’作品’を同ブランドで売り出すことで、いわば身内(みうち)化している

というように、愛着を醸成するのに、非常に有効な仕組みになっています。

②ブランドへの行動

この仕組みをさらに深読みしてみましょう。

まず、この消費者はブランドに対して複数の行動をしています。

商品の思い出を想起する。売り場に持っていく。等々。

このようにブランドに対していくつかの行動をすると、脳は行動するからには自分はそのブランドが好きなのだろうと、錯覚します。

本当は、新品が半額になるというのが本音であるかもしれませんが、脳は都合のよいように解釈します。

つまり、ブランドが好きだから、売り場にもっていったのだ、と。

結果として、自分はブランドが好き、ということが脳裏に焼き付けられます。

さらに、このサービスでは、2度も同じブランドのジーンズを買うわけです。

この事実は重いです。

2度も同じブランドのジーンズを買うわけですので、脳は、そのブランドが相当好きと解釈するでしょう。

応用例

ジュエリーの4℃は、世代別にブランドを使い分けています。

・10代向けの、『カナル4℃』
・20~30代向けの『4℃」
・40代以上向けの『プレジェンス』

その理由は、各世代によって、手の形がかわるなどするため、商品に対する需要が違ってくるからです。

例えば、若いころは4℃の華奢デザインでもよく似合うけど、年齢を重ねていくと、それ相応の大粒なもののほうが似合うようになってくる、など。

なので、4℃の対象年齢が過ぎると、同ブランドを見事に卒業していくようです。

ここでA.P.Cをまねて、下取りサービスをしたらどうでしょうか。

つまり、4℃の対象年齢が過ぎ、同ブランドを卒業するタイミングで、4℃ブランドの商品をお持ちいただければ、『プレジェンス』の商品を安くご提供します、とやるわけです。

こうしてやれば、非常にスムーズな形で、ブランドに対する愛着を強化すると共に、生涯顧客を獲得するに至るのではないでしょうか。

また、4℃に限らず、指輪を販売している人にとっては、A.P.Cと同じような考え方が適用できるのではないかと思います。

おまけ

実は、僕はファッションブランドTAKEO KIKUCHIのファンです。

ベーシックなものはユニクロが多いのですが、ちょっとだけ贅沢する場合は、TAKEO KIKUCHIになることが多いです。

TAKEO KIKUCHIも同じようなサービスをしてくれないかなぁ、と思います。

さすがに着古したパーカーなどは再販は無理だとしても、ユーザの思い出話を聞けるだけでも、ブランドとしては価値があるのではないかと思います。