製菓各社が大人向けの菓子に力を入れる中で、先行する江崎グリコが快走を続けています。

オフィスグリコ、このコラムで紹介したことのあるバトンドール等々。

これらの戦術の奥にある戦略について考えてみます。

これどういうもの?

まずは、9/3のMJの記事から。

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・今、東京のオフィスの間で広がっているのが江崎グリコの置き菓子サービス「オフィスグリコ」。
・グリコが事務所の空いている場所にボックスや冷蔵庫を置かせてもらうだけ。
・利用者は、商品購入時にボックス上部についたカエルの人形の口に代金を投入する。
・週に一回程度商品の補充でグリコの担当者が訪問するサービスだ。
・事業の本格開始は2002年。
・現在、ボックスは約12万台設置、180万人ほどが利用し、売れ筋はビスケット菓子の「フレンドベーカリー」や「ビスコ」。
・「大人の男性がこれほど、ビスコを選ぶとは思わなかった」
・課題の代金の回収率も向上し、13年に95%にまで引き上げた。
・品揃えや巡回コースも見直し、13年度には、売り上げが12年度比5%増の45億になり、初めて黒字になった。
・顧客との接点を増やし、大人たちにグリコを思い出してもらう試みは他にもある。
・直営店の菓子店「バトンドール」を大阪市の高島屋大阪店と阪急うめだ本店に出店。
・スーパーで売っているような菓子をあまり食べない消費者にアピールする。
・行列の絶えない同店では、ポッキーやプリッツのようなスティック菓子で、高級版の「バトンドール」を販売している。
・「バトンドールをたべて、ポッキーが懐かしくなり、スーパーに買いに行き、夫婦で食べた」(50代男性会社員)
・8月28日、新千歳空港に落ち着いた雰囲気の菓子店がオープンした。
・グリコの「キャラメルキッチン」だ。
・生キャラメルを店内で手作りし、その様子もガラス越しに見られる。
・同空港の乗車客は地方空港では日本トップクラス。
・出張で訪れる会社員や観光客、地元の人の需要を取り込む狙いだ。
・「オシャレなお店で大人っぽい感じ」と店構えにひかれて購入した奈良県の松本知子さん(36)は、「グリコがこんなお店を開いたなんて」と驚く。

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なかなかの戦略だと思います。

では、その戦略を分析していきましょう。

マーケティング的な仕掛けは?

①かつての顧客

このグリコの戦略を理解するには、まず、時代背景を理解する必要があります。

まず、挙げられるのが少子化です。

グリコのこれまでの主要顧客である子供は減少傾向にあります。

このままでは、じり貧になるのは誰が見ても明らかでしょう。

このような状況のなかで活路を見出すとすると、新たな顧客を見出さなくてはいけない、と考えるのが自然です。

となると、一つには海外展開が考えられますが、もう一つ考えられるのが、

「かつての顧客を取り戻す」

という考え方です。

かつては駄菓子屋やスーパーなどで頻繁にグリコの菓子に接点を持っていた人も、生活が変わることによって次第に接点を失ってしまって、次第に菓子を食べなくなります。

であれば、接点を積極的につくっていって、接点を取り戻そう、これがグリコの戦略の基本的な考え方なのだと思います。

しかも、かつての顧客というのは、ブランドに対して好意的な印象を持っています。

なので、海外展開のように一からブランドイメージを定着させる必要がなく
より少ない労力で売り上げを作ることが期待できます。

つまり、ブランド資産がかつての顧客には蓄積されているため、それを活用しましょう、ということです。

こうやって考えてみると、このグリコの戦略は、実に理路整然としていることに気付きます。

②長期的視点での戦略

そして、そのかつての顧客が一番沢山いるのが、オフィスであった。

だからこそ、11年赤字でも事業を継続させたのでしょう。

この11年赤字でも事業を継続させた、というのはすごいことですよね。

赤字部門を切ることは、ある意味誰でもできることで、赤字であっても継続させるには、戦略的な強い意志が必要となってきます。

こういったことは、5,6年で任期を終えるサラリーマン社長には難しいのではないかと調べてみたのですが、案の定でした。

現在の代表取締役である江崎勝久さんは、1982年の社長に就任して以来、実に31年間の同職を務めているようです。

長期政権が必ずしも良いとは限りませんが、このように長期的な視野で、大きな構想の下で戦略を実行していくことは、とても大切なことだと思います。

③チャネルの開拓

さて、話をかつての顧客に戻します。

かつての顧客を取り戻すには、当たり前といえば、当たり前ですが、かつての顧客に働きかけなければいけません。

ということは、新しいチャネルを開拓するということが、大変有望であると考えられます。

いわれてみれば、当たり前かもしれませんが、ほかの菓子メーカーが新しいチャネルを開拓しているでしょうか?

単に、「大人のための」と銘打ったり、「濃い、濃厚」、「高級」、「プレミアム」としているだけだったりはしないでしょうか。

確かに、それでもかつての顧客にアプローチはしていますが、かつての顧客がいる場所(空港、百貨店、オフィス)にまでは、出向いてはいない。

つまりは、チャネルには着眼していないのが現状ではないでしょうか。

この点、グリコの着眼点は一段レベルが上で、かつ骨太な感じがします。

「バトンドールをたべて、ポッキーが懐かしくなり、スーパーに買いに行き、夫婦で食べた」

といった顧客の感想は、まさに、新しいチャネルを開拓したことによってかつての顧客を取り戻した例といえるでしょう。

おまけ

さて、グリコの戦略、いかがだったでしょうか?

長期的な視野に立った骨太な戦略のもと、多少の赤字の事業はあっても、戦略的な観点で事業を継続する。

こういった姿勢は経営者として、見習いたいところだと思います。

また、シュリンクする市場で、どのように活路を見出していくか、参考になったのではないでしょうか。