今回は、寒さの続くこの時期需要が高まるリップクリームについて取り上げます。

これまでずっと、ロート製薬のメンソレータムが高いシェアをほこってきた分野だったようですが、最近では高保湿をうたったニベアの「ディープモイシュチャーリップ」が人気をあつめており、金額シェアではトップのたったようです。

今回は、この逆転劇を見ていきたいと思います。

これどういうもの?

まずは、2/7のMJの記事から

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・ニベア花王によるとリップクリームの2013年の市場規模は前年比3%増の180億円で、7年前と比べると約2割増加した。

・成長市場だけに各社が新商品の投入や販促の強化などを進めるなか、ロート製薬の「メンソレータム」が高いシェアを握ってきた。

・「ニベア」はいまでこそメンソレータムと首位を争うまでになったが、6~7年前まで4位前後で後塵を拝していた。

・シェア拡大の原動力となったのが、「安売りをせずに、保湿などの機能を訴える高付加価値戦略」(ニベア花王マーケティング部の渡辺直人氏)だ。

・ニベアブランドの高付加価値戦略を象徴するのが、今回ランキングで首位となった「ディープモイスチャーリップ」。

・唇のひび割れを防ぐだけでなく、独自開発した保水成分で「軽い一塗りでも唇に潤いを長時間感じられるようにした」。

・これがメンソレータムなど競合製品との差異化につながっているという。

・ディープモイスチャーリップの平均価格は459.5円で、全製品の平均価格170円を上回る。

(中略)

・リップクリームは店頭で試し塗りができず、塗り心地のよさなど機能を来店客にアピールするのが難しい。

・価格競争に陥りやすい面もあるなか、ニベア花王はハンドクリームで培った「肌に潤いを与えるブランドイメージ」の浸透で、消費者からの安心感獲得につなげようとしている。

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メンソレータム薬用リップスティックXDの平均価格が92.6円。
一方、ニベアのディープモイスチャーリップの平均価格は459.5円だから、
メンソレータムのそれの5倍。

この価格差がありながら、シェアトップ。

なかなかすごいですよね。

では、そのマーケティング的な仕掛けを見ていきましょう。

マーケティング的な仕掛けは?

①差別化

商品にとって、一番大事なこと。

それは差別化(=買う理由)です。

某通信キャリアのテレビCM(※)などのように、いかに感動的に感情に訴えかけようとも、差別化、つまりはその商品を選ぶ理由ががなければ、人はその商品を買いません。

人は商品を買うとき、結構冷静で論理的に選定するものなのです。

(※)http://www.youtube.com/watch?v=g4jwm72TI9A
  

差別化とはいっても、明らかに機能が優れている必要はありません。

例えば、売上No1という訴求の仕方で、他の人が買っているのだからというものであっても、それは立派な買う理由を与えているといえます。

もちろん、機能的な差別化があればなおよいわけです。

さて、このニベアはディープモイスチャーリップですが、「唇を潤す」という明確な機能的な差別化をおこなっています。

②戦略的な争点の変更

「唇を潤す」というと、リップスティックにとっては当たり前の機能で、特に注目すべきことではないようにも思えます。

しかし、これが今回の逆転劇にとっては非常に有効だったと思われます。

まずは、メンソレータム薬用リップスティックXDのパッケージを見てもらいたい。

http://www.rohto.co.jp/prod/?jan=108015

メンソレータムのキャラクターが印刷されており、これは完全に、医薬品として捕らえられます。

いままでの「唇の荒れやひび割れの対策」とということだったら、とてもよいパッケージであり、メンソレータムという商品イメージにもフィットしたものであったでしょう。

しかし、「唇を潤す」という化粧品(※)に近い争点となると、それはニベアのブランドイメージのほうがよりフィットする、ということになるのでしょう。

つまり、ニベアは、自分が勝ちやすい土俵、争点へのうまく誘導することに成功したといえます。

(※)以下のCMをみると完全に化粧品ですよね。ベネフィットが、医薬品のそれではなく、異性を意識したものになっていて、完全に化粧品となっていることがわかります。

 http://www.youtube.com/watch?v=QTZNCrXIi_A

ちなみに、メンソレータムの高保湿タイプのリップスティックを出していますが、下のようなパッケージであり、医薬品としてイメージは、いかんともしがたいものがあります。

http://www.mentholatum-lip.jp/deepmoist/

おまけ

リップスティックというと、女子中高生が使うというイメージでしたが、これが’化粧品’ということになると、大人の女性も対象となります。

であれば、高付加価値戦略(=高価格商品)というのは、対象とする顧客と整合性がとれていますよね。

そして、新しい層に対して訴求できたため、7年前から2割増と、成長分野とすることができたわけです。

一方、メンソレータムですが、高保湿という争点では、ニベアに水をあけられたところはありますが、10代をターゲットとする商品では依然強さを発揮しているものと思われます。

下のような商品も売れているようで、今後も強さを発揮するのではないでしょうか。

http://www.mentholatum-lip.jp/mogitate/