今回は、出版取次最大手の日販の販促手段を取り上げてみたいと思います。

シュリンクしている業界にあって、どのように来店動機をつくっていくか、
参考になる事例になるかと思います。

これどういうもの?

まずは、8/27のMJ(日経流通新聞)の記事から。

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・取次最大手の日本出版販売(日販)は、2012年から書店向け販促企画「祭」に取り組んでいる。
・雑誌とのタイアップ企画やポイントキャンペーンを通じて利用者の来店頻度や客単価を上げるのが狙いだ。
・「美食の夏!当てよう!絶品お取り寄せプレゼント」
・8月下旬、丸善日本橋店では販促企画「祭」が大々的に展開されていた。
・同店では1日500人以上がキャンペーンに応募。
・篠田店長によると「応募者が多く、最初に設置した応募箱からは用紙が溢れてしまったほどだった」。
・今回は雑誌「dancyu(ダンチュウ)」を発行するプレジデント社とのタイアップ。
・書籍を1000円以上購入するか、バックナンバーも含め「ダンチュウ」関連の商品を購入すると、編集部が厳選した食品などが当たるキャンペーンに応募できる。
・全国で350店舗の書店が参加している。
・今回は、7月下旬に開始したにも関わらず、すでに応募数は44万通。
・月末には66万通に達する見込みだ。
・書店の店員も利用者一人一人への声掛けなどで積極的にキャンペーンを告知。
・書店側もキャンペーン実施に当たり、1回2万円の負担をしているため、どうせやるなら結果につなげたいと、店舗が一丸となってキャンペーンに取り組んでいる

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一見、目新しいところはないように映ってしまうかもしれませんが、
なかなかよく考えられた好企画だと思います。

それでは、マーケティング的な仕掛けを考えていきましょう。

マーケティング的な仕掛けは?

まず、出版市場の状況ですが、毎年3%づつ縮小を続けている市場です。
出版市場の縮小とともに、書店数も減少しています。
14年の書店数は、1万3943店。2万店以上だった00年と比較すると
約6割に減ったという計算になります。

大変厳しい状況であるわけです。

その原因は、いろいろ考えられるでしょう。

活字離れ、スマホ、ネット通販などなど。

中でも、ネット通販の

①家に居ながらにして注文できる。
②口コミなど評判がすぐわかる。

などの利便性は大変強力です。

また、ネット通販の弱点でもあった、すぐに読めないという点も次第に改善されてきて、ますます、実店舗に足をむける理由がなくなりつつあるといえるかと思います。

そんな背景を踏まえて、この企画のメリットを見ていきましょう。

①卸売業の販売促進支援

卸売業の基本的な機能として、①調達②物流③金融④情報提供・販売促進支援などあるわけですが、そのなかでも、①調達②物流③金融はできて当たり前。

④ができると卸売業として、差別化につながります。

例えば、キーコーヒーなどは、喫茶店の支援策として、看板をつくったり、ポスターをつくったりしたりしていて、喫茶店とは切っても切れない関係になっています。

以前紹介した、コスモスベリーズでも、タブレットをつかった販促支援など、④の機能が充実していましたよね。

今回の企画も、卸売業による販促支援策であるわけで、大変筋のよい施策といえるかと思います。

②三方好し

それから、この企画、沢山関係者が出てくるわけですが、そのそれぞれにメリットがあるところが、秀逸です。

まず、書店。

書店は、先に書いたように苦境に陥っているところが多いと思われます。

キャンペーンを打とうにも、価格が決まっているわけで、安売りはできないし、
だからといって商品を宣伝したとしても、本というのは、
その書店でしか売っていないという商品ではなく、
それこそ、ネット購入に至ってしまうことも十分考えられます。

そうなると、商品も宣伝できない。

では、来店した人になにかプレゼントするといっても、大きなチェーン店でもなければ、そんなに集客につながるようなプレゼントするのはコスト的に難しいでしょう。

そもそも、ポスターなどの販促物をつくるお金さえ出てこないかもしれません。

ということで、手詰まり感があったことも想像できます。

そんな時に、カモがねぎをしょっていると映ったかどうかはわかりませんが、卸売が販促企画をしょってきてくれるのだったら、願ったりかなったりと映ったことでしょう。

2万円だしても協力するというのも納得です。

つづいて、出版社。

当然、出版社としては、自社の本がフィーチャーされて特別に売られるわけですので、悪い話であるわけがありません。

特に、雑誌というのは、衝動買いする種類の商品ですので
リアル店舗とは大変相性が良いでしょう。

また、通常、プレゼント企画などは、出版社自身が、出版物のなかや、その出版物の宣伝媒体で行っていたわけですが、それを、他人がやってくれるわけですので、書店同様、カモねぎと映ったとしても不思議ではありません。

しかも、350という多店舗でやってくれるわけなので、売上的にもインパクトがあると想像できます。

売上的にもインパクトがあるゆえに、賞品も豪華にすることができるし、それがまた集客につながっていく、こういう好循環が生まれてくるのだと思います。

そして、最後に、一番重要な書店に来店するお客さん。

お客さんも、本を買ってプレゼントがもらえるのだから、当然うれしいですよね。

本屋にいくお客さんって、具体的に特定の本を目的にしていく場合もあるでしょうが、なんか面白そうだからとか、そういった漠然とした動機なのではないでしょうか。

その点、「祭」というのは、来店するきっかけとしてはうってつけだと思います。

ついでに言えば、賞品を提供する提供者にとってもよい宣伝になるでしょう。

このように、この企画は、企画にかかわるすべての人にメリットがあるといえそうです。

おまけ

昨今、私も本を買う時は、ネット通販で買うことが多くなってしまいました。

どうしても、本を買うという発想になると、前述した圧倒的な利便性(特に時間の節約)があるため、「ネットで」、となってしまいます。

本屋さんを、”本を売る場所”と定義してる限り、ネットにはどうしても勝てないのではないかと思います。

そうなると、突破口はないのでしょうか。

確かに、この趨勢を逆回転させるほどの力はないにしても、1店舗、2店舗なら切り口を変えれば、様々な可能性が考えられます。

例えば、時間消費という切り口はいかがでしょうか。

”本を買うのに時間がないためネットで買う”、なので、そこを逆手にとって

”時間があるので書店にいく”にしてしまおう、ということです。

昼はカフェ、夜はバーのプロントの竹村社長が面白いことを言っていました。

・・・・・・・・・・・
当社の理念は家庭と職場をつなぐジャンクションです。
目的店ではないんですね。
わざわざ来店する店じゃないんです。
カフェ自体がそういう業態です。
カフェは生活の動線上にないといけない業態。
いかにいい場所に快適な空間をつくるかが勝負です。
・・・・・・・・・・・
(9/8 MJより)

さて、この言葉、そっくり書店にも当てはまるのではないでしょうか。
「目的店ではない」、
「生活の動線上にないといけない業態。」

まったくその通りですよね。

ということで、こんな書店を考えてみました。

”ウィスキーをのみながら本がよめる本屋”

ターゲットは、30代から40代の独身サラリーマン。

金曜日、20:30。食事も済ませたけど、このまま家に帰るのは、ちと、さみしい。

だからといって、騒がしい飲み屋に行く気にもならない。

そんなのときに、小一時間、ウィスキーをのみながら本に没頭できる空間があったらどうでしょうか?

魅力的にうつる人もいるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。